結論ED治療薬と市販の活力ケア製品の違いは、効果の強弱ではなく、置かれている承認区分と、そこで承認されている効能又は効果の範囲にあります。ED治療薬は医療用医薬品であり、バイアグラ錠の添付文書に記載された効能又は効果は「勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)」です。市販の活力ケア製品の多くが属する指定医薬部外品は、厚生労働省通知によって効能又は効果の範囲が滋養強壮・虚弱体質・栄養補給などに定められており、両者の範囲は重なりません。
この記事の要点
- 医薬品医療機器等法は医薬品と医薬部外品を別々に定義し、食品衛生法は食品の定義から医薬品と医薬部外品を除いている。三者は制度上、重ならない区分として置かれている
- バイアグラ錠の効能又は効果は「勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)」で、規制区分は処方箋医薬品である
- 同じ添付文書に「本剤は催淫剤又は性欲増進剤ではない」と明記されている
- 指定医薬部外品の効能又は効果の範囲は厚生労働省通知で品目群ごとに定められ、「ビタミンを含有する保健薬」は滋養強壮、虚弱体質、各種の場合の栄養補給に限定されている
- いわゆる健康食品には法律上の定義がなく、食品が医薬品的な効能効果を表示することはできない
- 一般用医薬品には性機能に関する症状を効能又は効果とする製剤が承認されており、「市販品にはそうした効能又は効果が一切ない」という整理は区分をまたいだ一般化になる
ED治療薬と、ドラッグストアや通信販売で買えるいわゆる精力剤・活力ケア製品は、しばしば同じ棚に並ぶものとして語られます。しかし両者は、そもそも異なる法律の異なる条文の上に置かれた別の区分であり、承認されている効能又は効果の範囲も、その範囲を誰がどう審査したかも異なります。この記事では、どちらが優れているかという比較は行わず、それぞれがどの制度の上に置かれ、何を効能又は効果として承認されているのかを、法令・通知・添付文書の記載だけを根拠に整理します。以降、市販品については俗称を用いず、承認区分の名称で呼びます。
ED治療薬と市販品は、それぞれどの制度の上に置かれているか
両者を分けているのは、医薬品医療機器等法(薬機法)と食品衛生法の定義です。薬機法第2条第1項は医薬品を、疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされている物、および身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物と定義しています。同条第2項は医薬部外品を、人体に対する作用が緩和なものとして別に定義し、第3号で「厚生労働大臣が指定するもの」を含めています。
食品側は、食品衛生法が食品を「全ての飲食物」と定義したうえで、薬機法に規定する医薬品・医薬部外品・再生医療等製品をそこから除いています。つまり、ある製品が医薬品または医薬部外品であれば、それは制度上、食品ではありません。三者は程度の違いではなく、排他的な区分として置かれています。
| 区分 | 根拠となる法令上の位置づけ | 効能又は効果の表示 | 入手方法 |
|---|---|---|---|
| 医療用医薬品 (処方箋医薬品) | 薬機法第2条第1項の医薬品。品目ごとに国の承認を受ける | 承認された効能又は効果を添付文書に記載する | 医師の診察と処方を経る |
| 一般用医薬品 | 薬機法第2条第1項の医薬品。品目ごとに国の承認を受ける | 承認された効能又は効果を記載する | 薬局・店舗販売業で購入する。第1類医薬品は薬剤師が販売する |
| 指定医薬部外品 | 薬機法第2条第2項第3号に基づき厚生労働大臣が指定した医薬部外品。品目ごとに承認を受ける | 品目群ごとに通知で定められた範囲内の効能又は効果を記載する | 薬局・ドラッグストア・通信販売等で購入する |
| 保健機能食品 いわゆる健康食品 | 食品。食品衛生法上の食品の定義から医薬品・医薬部外品は除かれる | 医薬品的な効能効果は表示できない。保健機能食品は制度に定められた範囲で機能等を表示する | 食品として流通する |
この表は、それぞれの区分が制度上どこに置かれているかを整理したものであり、効果の強さを比較したものではありません。区分が異なる製品どうしを同一の物差しで並べることは、制度の設計上そもそも想定されていません。
ED治療薬に承認されている効能又は効果
ED治療薬は医療用医薬品です。バイアグラ錠25mg/50mgおよびバイアグラODフィルム25mg/50mgの添付文書には、効能又は効果として次の一文が記載されています。
勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)
バイアグラ錠25mg/バイアグラ錠50mg/バイアグラODフィルム25mg/バイアグラODフィルム50mg 添付文書 4. 効能又は効果より引用。添付文書は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品 情報検索で販売名から確認できます。この効能又は効果には、さらに2つの注意が続きます。ひとつは、投与に際して既往歴の調査や諸検査を行い、客観的な診断に基づき臨床上治療が必要とされる患者に限定すること。もうひとつが、「本剤は催淫剤又は性欲増進剤ではない」という一文です。前者は、この薬が診断を前提として使われる設計であることを示しています。後者は、性欲や興奮を高める目的の製品ではないことを、製造販売元ではなく承認された文書の側が明示しているという点で重要です。
規制区分は処方箋医薬品で、添付文書の冒頭には「注意-医師の処方箋により使用すること」と記載されています。承認番号は錠25mgが21100AMZ00053、錠50mgが21100AMZ00054で、販売開始は1999年3月です。国内で正規に入手する経路と、それ以外の経路との違いは入手経路ごとの違いの整理で、警告・禁忌として定められている条件は安全性とされる範囲の整理で扱っています。
指定医薬部外品に承認されている効能又は効果の範囲
指定医薬部外品
薬機法第2条第2項第3号に基づき、厚生労働大臣が指定した医薬部外品のことです。指定は昭和36年厚生省告示第14号によって行われ、その後も改正が重ねられています。薬機法第59条第3号により、この区分に該当する製品には厚生労働省令で定める文字を容器等に記載することとされ、施行規則第219条の2でその文字が定められています。この区分に含まれる品目群の多くは、平成16年および平成11年の措置により、一般用医薬品から医薬部外品へ移行したものです。
指定医薬部外品が一般用医薬品と決定的に異なるのは、効能又は効果として記載できる範囲があらかじめ定められている点です。厚生労働省医薬食品局長通知「一般用医薬品から医薬部外品に移行する品目の範囲について」(平成16年7月16日 薬食発第0716006号)は、移行した品目群ごとに、対象となる範囲を具体的な文言で列挙しています。
| 品目群 | 通知に列挙されている効能又は効果の範囲 |
|---|---|
| ビタミンを含有する保健薬 | 滋養強壮、虚弱体質、次の場合の栄養補給:胃腸障害、栄養障害、産前産後、小児・幼児の発育期、偏食児、食欲不振、肉体疲労、妊娠授乳期、発熱性消耗性疾患、病後の体力低下、病中病後 |
| 生薬を主たる有効成分とする保健薬 | 虚弱体質、肉体疲労、病中病後・病後の体力低下、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症、発育期の滋養強壮 |
列挙されているのは、栄養状態や体力に関する項目です。性機能や勃起に関する記載は、いずれの品目群の範囲にも含まれていません。これは各製品の努力や配合内容の問題ではなく、この区分で承認を受けられる効能又は効果の枠そのものが、そう定められているということです。
実際の製品表示も、この範囲の中に収まっています。たとえばプロキオン(株式会社京福堂/指定医薬部外品、有効成分オキソアミヂン)の公式サイトには、指定医薬部外品として承認された効能効果として「滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病後の体力低下、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後などの場合の栄養補給」と記載されています。通知が定める「ビタミンを含有する保健薬」の範囲と対応しており、区分の枠のとおりに表示されていることが確認できます。
一般用医薬品との線引き
同じ「市販されているもの」でも、一般用医薬品と指定医薬部外品では、記載できる効能又は効果の性質が異なります。厚生労働省が公表している登録販売者試験問題の作成に関する手引きには、医薬部外品の保健薬について、その効能・効果の範囲は滋養強壮、虚弱体質の改善、病中・病後の栄養補給等に限定されており、神経痛・筋肉痛・関節痛といった特定部位の症状に対する効能・効果は医薬品においてのみ認められている旨が記載されています。
つまり、症状を名指しして「その症状に対する効能又は効果」を掲げられるのは医薬品の側であり、医薬部外品の保健薬は体調や栄養状態を対象とする範囲にとどまる、という線引きです。
この線引きが、承認の手続きのどこで生じているのかについては、承認区分ごとの手続きと表示できる範囲で扱っています。同じ有効成分を同じ量含みながら、一方が指定医薬部外品、もう一方が第3類医薬品として承認されている例も、そちらで並べています。
健康食品はどの制度の上に置かれているか
いわゆる健康食品には、法律上の定義がありません。厚生労働省は、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取され、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指すものと説明しています。サプリメント、栄養補助食品といった呼び名も同様で、いずれも販売する側が独自の判断で用いている名称です。
国の制度として置かれているのは保健機能食品制度で、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の3つからなります。それぞれ許可・基準・届出という異なる仕組みで、定められた範囲の表示が認められるものです。これらに該当しない食品は一般食品として扱われます。
食品と医薬品の関係
食品衛生法上の食品の定義からは医薬品と医薬部外品が除かれているため、食品が医薬品的な効能効果を表示することはできません。食品でありながら医薬品と紛らわしい効能効果を表示した場合、無承認無許可医薬品として薬機法上の問題になります。健康食品の表示に病名や症状名が出てこないのは、この構造によるものです。
詳細は厚生労働省のいわゆる「健康食品」のページで公開されています。
「市販品に性機能の効能又は効果は一切ない」は正確ではない
ここまでの整理から、市販されているものには性機能に関する効能又は効果が一切存在しない、と読まれるかもしれません。しかしそれは区分をまたいだ一般化であり、事実とは異なります。範囲が限定されているのは指定医薬部外品と食品であって、一般用医薬品はその限りではないからです。
実例として、テストステロンを有効成分とする外用剤であるグローミン(大東製薬工業/第1類医薬品)は、承認された効能又は効果に「男性ホルモン分泌不足による性器の神経衰弱の諸症即ち勃起力減退、早漏、陰萎、性欲欠乏、性感減退、遺精、睾丸欠落症、先天性睾丸発育不全」等を含んでいます。これは医薬品として承認を受けているために記載できるものであり、第1類医薬品として薬剤師が販売する区分に置かれています。
したがって、市販か処方かという軸と、効能又は効果の範囲という軸は一致しません。整理すべきは「店頭で買えるかどうか」ではなく「どの区分で、どの範囲の承認を受けているか」です。同じ有効成分でも用量や剤形によって区分が変わることがあり、区分が変われば記載できる内容も、販売の条件も変わります。なお、ED治療薬の服用後に生じる反応そのものについては頭痛や顔の赤みの経過の整理で扱っています。
両者は代替関係にあるか
ここまでの記載を並べると、代替関係の有無は評価ではなく、範囲の重なりの問題として答えられます。勃起不全を効能又は効果として承認されているのは医療用医薬品であり、指定医薬部外品の保健薬に定められた範囲は滋養強壮・虚弱体質・栄養補給などです。両者の範囲は重なっていません。範囲が重ならない以上、一方が他方の代わりを務めるという関係は、制度の上には存在しません。
これは、どちらかが劣っているという意味ではありません。目的が異なる区分に、異なる審査を経て、異なる範囲の承認が与えられている、というだけのことです。栄養状態や体力の維持を目的に指定医薬部外品を選ぶことと、勃起不全について医療機関で相談することは、そもそも別の行動であり、片方がもう片方の代用になる場面が制度上想定されていません。
症状について判断が必要な場合
勃起不全には、血管性・神経性・内分泌性・心因性・薬剤性といった背景要因が分類として知られており、これらは医療機関での確認の対象です。持病や服薬がある場合、ED治療薬を服用しても効果が得られない場合は、市販品で様子を見る前に医療機関へご相談ください。判断の目安は受診が必要かどうかの判断に、背景要因の分類は勃起不全の背景要因の分類にまとめています。
ED治療薬を処方されていて効果が感じられない場合に、自己判断で量を増やす、あるいは市販品を上乗せするという選択については、用法及び用量に定められた範囲と、効果が得られない要因の切り分けが先になります。この点は効かないときに増量してよいかの整理で扱います。
よくある質問
QED治療薬と精力剤と呼ばれる市販品は何が違いますか。
違いは効果の強弱ではなく、置かれている承認区分と、そこで承認されている効能又は効果の範囲です。ED治療薬は医療用医薬品で、効能又は効果は勃起不全と定められています。市販品の多くが属する指定医薬部外品は、厚生労働省通知によって効能又は効果の範囲が滋養強壮、虚弱体質、各種の場合の栄養補給などに定められています。
QドラッグストアでED治療薬は買えますか。
バイアグラ錠の添付文書には規制区分として処方箋医薬品と記載され、冒頭に「注意-医師の処方箋により使用すること」と明記されています。処方箋医薬品は、店頭で処方箋なしに購入できる区分ではありません。国内で正規に入手する経路は、医師の診察と処方を経るものに限られます。
Q指定医薬部外品とは何ですか。
医薬品医療機器等法第2条第2項第3号に基づき厚生労働大臣が指定した医薬部外品です。指定は昭和36年厚生省告示第14号によって行われ、該当する製品には厚生労働省令で定める文字を容器等に記載することとされています。品目群ごとの効能又は効果の範囲は、厚生労働省の通知で定められています。
Q市販の活力ケア製品はED治療薬の代わりになりますか。
承認されている効能又は効果の範囲が重ならないため、制度の上では置き換えの関係が成立しません。勃起不全を効能又は効果として承認されているのは医療用医薬品であり、指定医薬部外品の保健薬に定められた範囲は滋養強壮、虚弱体質、栄養補給などです。症状について判断が必要な場合は医療機関にご相談ください。
Q健康食品とサプリメントは制度上どう扱われますか。
いずれも法律上の定義はなく、制度上は食品に位置づけられます。食品衛生法上の食品の定義から医薬品と医薬部外品は除かれており、食品が医薬品的な効能効果を表示することはできません。国の制度としては、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品からなる保健機能食品制度があります。
Q市販品を続けても変化がない場合はどうすればよいですか。
指定医薬部外品や食品に定められている範囲は滋養強壮や栄養補給であり、勃起不全の改善を目的とした区分ではありません。勃起不全には血管性・神経性・内分泌性・心因性・薬剤性といった背景要因が分類として知られており、これらは医療機関での確認の対象です。継続の可否を含め、医療機関へご相談ください。
まとめ
ED治療薬と市販の活力ケア製品は、効果の強弱で並べられる対象ではなく、異なる承認区分に置かれた別のものです。ED治療薬は医療用医薬品であり、バイアグラ錠の効能又は効果は「勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)」、規制区分は処方箋医薬品です。同じ添付文書に「本剤は催淫剤又は性欲増進剤ではない」とも記載されています。
市販の活力ケア製品の多くが属する指定医薬部外品は、厚生労働省通知によって効能又は効果の範囲が品目群ごとに定められており、そこに性機能や勃起に関する記載はありません。いわゆる健康食品には法律上の定義がなく、食品である以上、医薬品的な効能効果を表示することはできません。
一方で、一般用医薬品には性機能に関する症状を効能又は効果とする製剤が承認されています。市販か処方かという軸と、効能又は効果の範囲という軸は一致しません。製品を見るときに確かめるべきは、店頭に並んでいるかどうかではなく、どの区分で、どの範囲の承認を受け、何をそのまま表示しているかです。
本記事の法令・通知の記載は、医薬品医療機器等法第2条・第59条、同法施行規則第219条の2、食品衛生法第4条、昭和36年厚生省告示第14号、および厚生労働省医薬食品局長通知「一般用医薬品から医薬部外品に移行する品目の範囲について」(平成16年7月16日 薬食発第0716006号)に基づいています。医療用医薬品の記載は、バイアグラ錠25mg/バイアグラ錠50mg/バイアグラODフィルム25mg/バイアグラODフィルム50mg 添付文書(2024年7月改訂・第8版、製造販売元:ヴィアトリス製薬合同会社)によります。一般用医薬品および指定医薬部外品の効能又は効果は、各製造販売元が公表する製品情報および添付文書情報によります。法令・通知・添付文書はいずれも改正・改訂されることがあるため、最新の内容はPMDA 医療用医薬品 情報検索および各公表元でご確認ください。本記事は情報の整理を目的としたものであり、診断・処方を行うものではありません。

