結論受診の必要性は、症状の強さだけで決まるものではありません。持病や服薬中の薬の有無、症状が続いている期間も、診療の場で確認される項目に含まれます。
この記事の要点
- 診療ガイドラインは、勃起不全に関わる背景として12の因子を挙げている
- 診療の対象として想定されているのは、性機能を専門としない医師を含む一般の医家である
- 診断は病歴の聴取、身体所見、臨床検査の三つの段階で構成されている
- 検査で測定が検討されるのは、午前中のホルモン値と、直近のデータがない場合の血糖値である
- 心臓に関わる病気がある場合は、性行為そのものの運動強度をもとにした評価が行われる
- 薬を使っても効果が得られない場合、最初に確認されるのは薬の入手経路と服薬の方法である
受診したほうがよいのかどうかを外から判断する材料は多くありません。この記事では、受診の要否を判定する代わりに、医療機関の側で何が確認されるのかを順に並べます。参照するのは、日本性機能学会と日本泌尿器科学会が編集した「ED診療ガイドライン[第3版]」(2018年)と、PDE5阻害薬の添付文書です。どの診療科がよいか、どの医療機関がよいかという比較は扱いません。
参照している診療ガイドラインは最新版ではありません
「ED診療ガイドライン[第3版]」は2018年1月に発行されたもので、第4版は作成されていません。2025年9月に、対象を男性の性機能障害全般へ広げた新しい診療ガイドラインが刊行され、置き換わっています。新しい版の本文は公開されていないため、この記事が参照しているのは第3版の記載です。実際の診療は最新の版に基づいて行われます。
受診の必要性は、症状の強さだけで決まるわけではない
診療ガイドラインは、勃起不全に関わる背景として12の因子を挙げています。症状そのものの程度とは別に、これらに該当するかどうかが確認の対象になります。
| 区分 | 挙げられている因子 |
|---|---|
| 年齢 | 加齢 |
| 代謝・循環に関わるもの | 糖尿病、肥満と運動不足、心血管疾患と高血圧 |
| 生活習慣 | 喫煙 |
| 内分泌に関わるもの | テストステロンの低下 |
| 他の臓器・神経に関わるもの | 慢性腎臓病と下部尿路症状、神経疾患、睡眠時無呼吸症候群 |
| 外的な要因 | 手術と外傷 |
| 精神・薬剤 | うつなどの精神的因子、薬剤 |
この表は影響の大きい順に並べたものではありません。確認の対象として挙げられている因子を区分ごとに整理したものです。
ここで一点、挙げられていない項目があります。脂質異常症です。診療ガイドラインは、国際的な会議の報告で取り上げられていないことと、日本人ではリスクファクターと考えられないことを理由に、脂質異常症を取り上げないこととしています。健康診断で指摘を受ける項目としてよく並ぶ組み合わせですが、この点については扱いが分かれています。
因子のうち、加齢については、世界各国の調査に共通して年齢とともに割合が上がることが示されているとされています。薬剤については、降圧薬、抗うつ薬、前立腺肥大症の治療に用いられる薬剤が挙げられています。
加齢、糖尿病、腎機能や肝機能の低下といった条件は、薬を使った場合の経過にも関わる条件として添付文書に記載されています。添付文書が定めている条件は、経過が変わる条件で扱っています。
診療の対象として想定されているのは、専門医だけではない
どの医療機関にかかるべきかを考える前に、診療ガイドラインが誰に向けて書かれているかを見ておくと、範囲が把握しやすくなります。
診療ガイドラインは、対象となるのは一般の医家であるとしています。そしてこの言葉には、性機能障害を専門としていない泌尿器科の医師も含まれると明記されています。第1版が作られた経緯にも同じ考え方が現れており、内服治療薬が承認されたことをきっかけに、性機能を専門としない医師が診療にあたる機会が増えたため、専門医以外の指針となるものを求める声が高まったことが背景として挙げられています。
つまり、専門的な検査を行う医師だけを対象に書かれたものではありません。診療ガイドラインの中でも、特殊な診断検査については性機能の専門医が行うものであり、一般の医家が扱う範囲の外にあると区分されています。
診察を受けたうえで薬の処方に至る場合、その費用や価格の決まり方は診療の区分によって変わります。公定価格が適用される場合と、医療機関が定める場合の分かれ方は、価格が決まる仕組みで扱っています。
診断は、三つの段階で構成されている
診療ガイドラインには、専門医以外が行う範囲についての診断の流れが図で示されています。段階は三つです。
| 段階 | 確認される内容 |
|---|---|
| 病歴 | 症状の発生と経過、これまでの治療歴、性欲や射精に関わる状態、可変可能な因子の特定、心理社会的な状態の把握 |
| 身体所見 | 身長と体重、心血管系と神経系の確認、外陰部の確認、50歳以上の場合の前立腺の触診 |
| 臨床検査 | ホルモン値、直近1年間のデータがない場合の血糖値など |
この三つのうち、診断に結びつく割合が最も高いのは最初の段階です。1,276名を対象とした研究では、問診で原因が診断されたものが57%、身体所見によるものが13.9%、臨床検査によるものが6.2%で、合計77.1%が専門的な検査に進むことなく診断可能であったと報告されています。残る22.9%が特殊な検査によって診断されています。
病歴の聴取では、症状そのものだけでなく、心理的な要因や対人関係についても確認の対象になるとされています。診察の環境についても記載があり、日本ではプライバシーの確保と時間の確保が課題であるとしたうえで、外に音の漏れない診察室で十分な時間をかけ、くつろいだ雰囲気で診察することが望ましいとされています。
パートナーの関与についても記載があります。評価と治療方針の決定にパートナーが関与することが望ましいとされ、初診時に同伴していない場合は次回の診察に同伴してもらうことが望ましい、という書き方になっています。同伴が条件として定められているわけではありません。
診察を経て処方される薬は、承認された区分の上では医師の処方を必要とする医薬品にあたります。区分ごとに何が定められているのかは、承認区分ごとの効能又は効果の範囲で扱っています。
検査で調べられるのは、ホルモンと血糖の値である
臨床検査の段階で何を測るかについては、診療ガイドラインに具体的な記載があります。
| 項目 | 記載されている条件 |
|---|---|
| 血糖値・検尿など | 最近1年間のデータがない場合に確認される |
| テストステロン値 | 全例に行うことは推奨されていない。性腺機能の低下を疑わせる所見がある場合に、午前中に測定する |
| その他のホルモン | テストステロンが低値であった場合に、追加で測定される |
ホルモン検査については、測定する項目の選び方に国内と国際的な推奨の違いがあります。国際的には総テストステロン値の測定が推奨されている一方、日本では加齢に伴う男性の性腺機能の低下を扱う手引きが遊離テストステロン値の測定を推奨しており、診療ガイドラインはこの違いを注として記載しています。
問診票が使われる場合もあります。診療ガイドラインには複数の問診票が付録として収載されており、用途によって使い分けることが示されています。ただし問診票は病歴の聴取の代わりになるものではない、という記載も併せて置かれています。
薬を投与する前に確認することとされている項目は、添付文書の側にも定められています。警告と禁忌に置かれている条件は、警告と禁忌に定められている条件で扱っています。
服薬中の薬は、受診前に整理しておける情報である
診療ガイドラインは、病歴の聴取において、服用している薬剤をすべてもれなく確認するとしています。理由は二つ挙げられています。因子として挙げられた薬剤以外でも薬剤によって症状が生じる可能性があること、そして治療の第一選択となる薬剤に対して禁忌となる薬剤があることです。喫煙と飲酒についても確認の対象とされています。
ここは、受診する側があらかじめ用意しておける数少ない項目です。服用中の薬の名称と量が分かるもの、たとえばお薬手帳や処方内容の控えを持参すれば、聴取の精度が上がります。
飲み薬以外の剤形も確認の対象になる
併用が問題になる薬剤には、飲み薬以外の剤形があるものが含まれます。貼り薬、スプレー、点眼薬といった形で使っているものは、薬として意識されにくく申告から漏れやすい対象です。処方されたものだけでなく、常備しているものも含めて確認の対象になります。
併用してはならないとされる薬剤と、併用に注意すべきとされる薬剤は、添付文書上で別の項に分けて定められています。それぞれの範囲は、併用禁忌と併用注意の区分で扱っています。
心臓に関わる病気がある場合、性行為そのものの負荷が評価される
心臓に関わる病気がある場合、確認の対象になるのは薬の適否だけではありません。診療ガイドラインは、性行為そのものが身体にかける負荷を評価の対象として扱っています。
負荷の大きさは運動強度の単位で示されています。安静時の消費量を1とした場合の倍数で表すもので、診療ガイドラインには次の目安が記載されています。
| 動作 | 強度 |
|---|---|
| 平地を時速3.2kmで歩行 | 2 |
| 平地を時速4.8kmで歩行 | 3 |
| 性行為(オルガズム前) | 2から3 |
| 性行為(オルガズム時) | 3から4 |
この表は運動の良し悪しを示したものではありません。負荷の大きさを比較するための目安として記載されているものです。
診療ガイドラインは、日常的にどの程度の運動を行っているかを聴取しておくことが、心血管のリスクを把握するうえで役に立つとしています。目安としては、平地を約1.6キロメートル、20分かけて歩く運動、あるいは階段を1階分を10秒以内に早足で駆け上がる運動が、性行為に相当するものとして挙げられています。
負荷が評価の対象になるのは、心臓に関わる病気がすでに分かっている場合だけではありません。診療ガイドラインは、勃起不全が心疾患の前兆として持つ意義は重要である、という位置づけを置いています。根拠として挙げられているのは、45,558名を対象とした複数のコホート研究のメタアナリシスで、勃起不全がある人はそうでない人と比べ、心血管のイベントについて補正後の相対リスクが1.47であったと報告されています。対象はいずれも欧米の集団です。
順序についての報告もあります。冠動脈の疾患が確認された患者のうち、勃起不全がそれに先行していた人の割合は、複数の研究で42%から93%とされ、先行していた期間は平均で23か月から60か月とされています。研究ごとに対象と方法が異なるため幅がありますが、いずれも勃起不全が先に現れたという方向で一致しています。また、勃起不全を主訴として受診した患者の18%で、それまで診断されていなかった高血圧が発見されたという報告があり、これが診察時に血圧を測定する根拠として挙げられています。
この位置づけからすると、受診によって確認されるのは勃起の状態だけではないことになります。症状そのものへの対応とは別に、背景にある状態が見つかる場合がある、という形で整理されています。
そのうえで、既に心臓に関わる病気が分かっている場合については、低い、中等度、高いの三つの群に分けて評価する枠組みが示されています。中等度と判断された場合には、運動負荷試験を行ったうえで低い群か高い群かに振り分けられます。どの群に該当するかは診察と検査を経て判断される事項であり、症状の自覚だけで決まるものではありません。心臓に関わる病気の治療を受けている場合、その内容は受診時に伝える対象になります。
血圧に関わる薬を服用している場合、薬剤によって併用が禁じられるものと、注意にとどまるものに分かれます。分かれ方の根拠は、禁忌と併用注意の分かれ方で扱っています。
薬を使っても効果が得られない場合、最初に確認されるのは服薬の方法である
すでに薬を使っていて効果が得られていない場合も、受診の対象になります。診療ガイドラインは、この場合に確認する順序を示しています。
順序の上位に置かれているのは、正規の薬剤を使っていたかどうかの確認と、正しく服薬していたかどうかの確認です。服薬の方法については、効果が得られなかった人に対して改めて指導を行った場合の報告があります。220名を対象とした報告では、指導から2か月後に59%で効果が得られるようになり、100名を対象とした別の報告では55%で効果が得られるようになったとされています。効果が得られないことが、そのまま薬が合わないことを意味するわけではない、という位置づけです。
服薬の方法を確認したうえでなお効果が得られない場合には、ホルモン値が低い場合の対応や、薬剤以外の方法が検討の対象として挙げられています。いずれも診察を経て判断される事項です。
添付文書の側にも、1回あたりの量、1日の回数、服用のタイミング、投与間隔がそれぞれ独立した条件として定められています。定められている範囲は、用法及び用量に定められた範囲で扱っています。
診察を経ずに入手した薬を使っている場合、確認の前提が置けない
前の項で、確認の順序の最初に置かれているのが「正規の薬剤を使っていたかどうか」であることに触れました。これが最初に置かれている理由は、成分と含有量が表示どおりであることを確認できない場合、その後の判断の前提が成立しないためです。
効果が得られなかったのが服薬の方法によるものなのか、量が足りていなかったためなのか、そもそも成分が含まれていなかったためなのかを、区別する手段がありません。体調に変化があった場合も同じで、その原因が何であったのかを手元で確かめる方法はないことになります。
診察を経ずに入手した薬を使っている場合、そのこと自体が受診時に伝える対象になります。使用した事実を申告することで、確認の前提が置ける状態になります。
診察を経ない経路で入手された製品について、成分の分析を行った調査の結果があります。調査ごとの数値と分母、調査方法の違いは、調査で確認された偽造品の割合で扱っています。
心当たりが心理的なものである場合にも、紹介先が定められている
心理的な要因に心当たりがある場合、身体の検査を受ける意味がないのではないか、という受け取り方があります。診療ガイドラインの整理は、これとは異なります。
診療ガイドラインは、背景を器質性、心因性、混合性の三つに分類したうえで、ほとんどの症例で要因が混ざり合っていることが多い点に注意すべきであるとしています。そのため、主たる要因がどちらにあるかという形で分類することが勧められる、という書き方になっています。心理的な心当たりがあることは、身体の側の確認を省く理由としては扱われていません。
そのうえで、精神科または心療内科への紹介が挙げられる場合として、次の4つが記載されています。明らかな器質的な原因が見あたらず、最初の機会から症状がある場合。神経や血管の障害を思わせる病歴がないにもかかわらず薬が無効な場合。本人またはパートナーに性的な外傷体験がある場合。そして抑うつの症状がある場合です。
いずれも、受診しないという選択肢ではなく、紹介先が変わるという形で整理されています。
背景として挙げられている要因は、身体の側と心理の側にまたがって分類されています。分類ごとの位置づけは、背景要因の分類で扱っています。
よくある質問
Q病院に行くべきかどうかは、どう判断すればよいですか。
症状の強さだけで決まるものではありません。診療ガイドラインは、糖尿病、心血管疾患と高血圧、慢性腎臓病、神経疾患、睡眠時無呼吸症候群、うつなどの精神的因子、服用中の薬剤といった12の因子を確認の対象として挙げています。これらに該当する場合、症状の程度にかかわらず確認の対象になります。判断そのものは診察と検査を経て行われる事項です。
Q専門の医師でなければ診てもらえないのですか。
診療ガイドラインは、対象となるのは一般の医家であり、この言葉には性機能障害を専門としていない泌尿器科の医師も含まれるとしています。専門医以外が診療にあたる機会が増えたことが、ガイドラインが作られた背景として挙げられています。ただし特殊な診断検査については、性機能の専門医が行うものとして区分されています。
Q診察では何をするのですか。
病歴の聴取、身体所見の確認、臨床検査の三つの段階で構成されています。病歴では症状の発生と経過、治療歴、心理社会的な状態が確認されます。身体所見では身長と体重、心血管系と神経系、外陰部が確認され、50歳以上の場合は前立腺の触診が行われることが望ましいとされています。臨床検査では、直近1年間のデータがない場合に血糖値などが確認されます。
Q持病があると薬は使えないのですか。
持病があることが、そのまま使えないことを意味するわけではありません。ただし薬の側には投与しないこととされている条件が定められており、心臓に関わる病気がある場合には、性行為そのものの負荷についても評価が行われます。評価は低い、中等度、高いの三つの群に分けて行われ、中等度の場合は運動負荷試験を経て振り分けられます。該当するかどうかは診察と検査を経て判断される事項です。
Q薬を使っても効果がない場合は、どうなりますか。
診療ガイドラインは、まず正規の薬剤を使っていたかどうかを確認し、次に正しく服薬していたかどうかを確認するとしています。効果が得られなかった人に改めて服薬指導を行った報告では、220名のうち2か月後に59%、別の100名では55%で効果が得られるようになったとされています。それでも効果が得られない場合に、ホルモン値の確認や薬剤以外の方法が検討の対象として挙げられています。
Q原因が心理的なものだと思う場合も、受診の対象になりますか。
診療ガイドラインは、背景を器質性、心因性、混合性の三つに分類したうえで、ほとんどの症例で要因が混ざり合っていることが多い点に注意すべきであるとしています。心理的な心当たりがあることは、身体の側の確認を省く理由としては扱われていません。心理的な要因が主である場合については、精神科または心療内科への紹介が挙げられる4つの場合が記載されています。
まとめ
受診したほうがよいかどうかを外から判定する材料は多くありません。診療ガイドラインが示しているのは判定の基準ではなく、診療の場で何が確認されるのかという手順です。確認の対象として挙げられているのは、12の因子への該当、症状の発生と経過、服用中の薬剤、身体所見、そして必要に応じた血糖値とホルモン値です。
診断の段階は病歴、身体所見、臨床検査の三つで、報告されている研究では合計77.1%が専門的な検査に進むことなく診断可能であったとされています。診療の対象として想定されているのは、性機能障害を専門としない医師を含む一般の医家です。
心臓に関わる病気がある場合は、薬の適否だけでなく、性行為そのものの負荷が評価の対象になります。低い、中等度、高いの三つの群に分けて評価され、中等度の場合は運動負荷試験を経て振り分けられます。すでに薬を使っていて効果が得られていない場合は、正規の薬剤であったかどうかと、服薬の方法が最初に確認されます。改めて服薬指導を行った報告では、半数を超える人で効果が得られるようになったとされています。
心理的な要因に心当たりがある場合も、身体の側の確認を省く理由としては扱われていません。要因は混ざり合っていることが多いとされ、心理的な要因が主である場合には紹介先が変わるという形で整理されています。受診する側があらかじめ用意できるのは、服用中の薬が分かるものと、症状が続いている期間の情報です。
本記事の記載は、「ED診療ガイドライン[第3版]」(2018年、日本性機能学会/日本泌尿器科学会編)、およびPDE5阻害薬の添付文書に基づいています。当該診療ガイドラインは2025年に刊行された新しい診療ガイドラインに置き換わっており、本記事が参照しているのは第3版の記載です。添付文書は改訂されることがあるため、最新版はPMDA 医療用医薬品 情報検索でご確認ください。本記事は情報の整理を目的としたものであり、診断・処方を行うものではありません。受診の要否および治療の内容は、医療機関でご相談ください。

